詩と愛

詩と絵のアイデア

26 線

駅がある。
駅があるということは電車が走るということであり、電車が走るということは線路があるということでもある。

 

ある時、途切れた線路を見かけた。駅からわずかに離れたところで、見事なまでに途切れている。途切れた場所は柵に囲われており、容易に幼子らが出入りできない構造になっている。柵の外は道になっていた。かつてはレールだけが走っていたところにアスファルトが流し込まれて、埋め込みながら固まってしまったのか。委細不明であるが、道になっていることは確かである。緋く錆びたレールが不服そうに顔を覗かせている。
線路の先は撤去されたに違いない。そうでなければ駅からわずかに伸びた、どこに辿り着くわけでもないレールが遺されているはずがなかった。この線路はかつてどこかに繋がっていた。大部分が撤去された今となっては、どこに繋がっていたのかを推し測ることさえできない。レールは撤去されてしまった。ほんの一部が、訳も分からず、役割を奪われる格好で、遺されてしまった。

 

線路を見ている。

かつて失われた光が、遠方から還り来て、緋く錆びたレールを鈍く閃かせる。

 

そういった想像も、駅に近づく電車の警笛に掻き消される。

吐き出される乗客と飲み込まれる乗客の中に自分がいないことを遠目に認める。
街灯の明かりが影を落としてくれないことを知る。
目の前で途切れた家路が知らない誰かの柵で囲われていく。

どこかの踏切で遮断機の降りる音が聞こえる。