詩と愛

詩と絵のアイデア

17 山

サンカと呼ばれた人々もその子孫も、いまはラッシュ・アワーの駅で新聞を広げて大あくびをしている。

文明から離れて、というのはどうも現代文明を駆け抜ける人間たちにとって憧れであるらしい。「山ガール」という言葉が生まれ、自然への回帰が進められようとしていた時期もあった(「やまおとこ」という言葉は昔から存在した。つまりはポケット怪獣である)。最近流行りのミニマリズムなどは、実態として文明からの逃避と憲法第25条に規定された権利の行使との間で彷徨うものたちを多分に含んでいる可能性がある(文明から離れることで文化的要素に翳りが生じると思いました)。

文明から逃れたいと願う人々の肝にあるのは、文明からの逃避などではなく、単に日常生活からの逃避ではないかと、ぼくは疑うのである。生活はつらい。生きるということ自体がつらい。つらいことから逃れたい人々が凝縮されて、「文明からの逃避」という抽象的怪物が生まれるのである。

しかし、文明から離れたところで生活は生活である。生きている限り、生活から逃れられない。なんたること! と言ったところで、人間は生に自らを人質に取られておりますので。

というわけで、ここに来て、次にすべきことが見えてきたと言えるのである。おわり