詩と愛

詩と絵のアイデア

4 愛と犠牲

ぼくは宮﨑駿監督作品の「風立ちぬ」が好き。

主人公の二郎が、結核患者である菜穂子の傍で煙草を嗜むシーンなのだけれども、あのシーンの「愛っぽさ」というか、ぼくはあれを見て「アッ、愛が形を取っているぞ」と思った。
菜穂子は結核患者だから、気遣って他所で煙草を吸おうと立ち上がる二郎。それを彼女は引き止めるわけだけれども、二郎は二郎でよくないゾと言いながらもそれに従う。
菜穂子は自分の先が短いことを知るから、ほんの少しだけでも、長く共にいたいと思う。たとえ、煙草が結核患者にとってよくなくても。たぶんそういうこと。

一方の二郎、喀血した菜穂子の元に駆けつけていたシーンが印象的。結核患者に密接して、キスまでする。
菜穂子は二郎の犠牲を受け入れた。だからこそ、自らも犠牲を示した。そして、二郎もそれを受け入れた。
犠牲が互いに受け入れられた瞬間、つまり、菜穂子が二郎を引き止めた瞬間に、「アッ、愛が形を取っているぞ」となる。ぼくはなった。